晩酌
こう言ってもなかなか信じてもらえないのだが、私には自宅で晩酌をする習慣がない。「酒は外で呑むもの」という固定観念があり、父が呑んでいるのを見てもそそられない。いっときは一升瓶を買い込み、晩酌習慣の定着を試みたこともあったが、どうもソノ気になれなかった。家というケの環境が、酒欲を萎えさせてしまう。
母がスーパー下戸だというのも、呑まない理由のひとつかもしれない。彼女の作るおかずが、ひたすらに白飯向きだからだ。ずいぶん前、私が夕飯の支度を手伝ったときに「そういうおつまみ的な料理の発想ってないわぁ」と感心していたのを思い出す。もしも母が酒を嗜む人だったら、わが家の食卓の風景はまた違うものになっていただろう。
そんなわが家に8月上旬、ビールのお中元が届いた。豪華にプレモル24缶セット。父はアサヒィスプドゥラァァァイ派なので「あんた呑みなさいよ」と私が消費役に抜擢された。
冷蔵庫を開け、気づいたときに1日1本。最初は「あるなら呑むか…」という消極的な姿勢だったが、暑い日が続いたこともあり、次第に「きょうはビールだな!」と鼻息荒く呑むようになった。プルタブをプシュッと言わせる瞬間がたまらない。
10日も経つと、ビールを飲むことが日常となりつつあることに気づいた。ためしに呑まないでみると、なんだか物足りない。そうか、これが晩酌というものか。そうか…
いま、残り10本を切った頃だろうか。いつなくなるのか怖くて、あえて数えていない。
どうしようこれから。
※写真はイメージです。お酒はほどほどに。