かっこいい仕事
◯瀬さんじゃないけど、自己紹介するときにかっこよく聞こえる仕事って、やっぱりあると思っている。
昨夜のこと。いつもの酒場で、ロマンスグレーなおじさまがひとり飲んでいらした。「タクシーひろっていくよ」と店のオーナーに別れを告げたのを横目で見ていたが、しばらくすると、困ったような笑顔を浮かべてふたたびカウンター席に戻ってきた。「タクシー見つからなくて、電車乗れなかった」……え、電車? どうやらお宿は約60km先にあるらしい。なんとしても今日のうちに戻りたいというおじさまのために、オーナーがタクシー会社に電話して運賃調査をはじめた。
明日の始発では間に合わないのですかと聞くと、「明朝5時に集合で、準備しなきゃいけなくて」。なにかの撮影かな…と思っていたら、
「花火屋なんです」
かっこいい。
なにこの圧倒的なかっこよさは。
電車に乗り遅れたのはかっこ悪いけど、かっこいい。
聞けば、競技会などで賞を狙う花火師ではなく、ショー要素の強い花火(音楽とともに打ち上げる類)の仕事をしている方だった。今回の豪雨で、設営を当日に行わなければならず、朝早くから作業にとりかかるとのこと。そりゃたいへんだ。
22時になり、手配したタクシーが到着。今度こそ舞い戻ることなく、帰路についた。…今ごろは、もう設営も終わっているだろうか。景気よく打ち上げてほしいな。
ちなみに、今回のタクシー代は17,000円だったはず。それを惜しげもなく払えるから、最終的にかっこいい。