この君 air

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記録(5月〜11月)

 

5月中旬、身体の調子がいつもと違うので自宅で検査をしたら、妊娠の兆候があった。

下旬、産婦人科へ。内診をした医師が開口一番「筋腫があるね」という。
「検診受けたことある?」
「無料の頸がん検診を5年前に。そのときは異常ありませんでした」
「5年ァ!? …子ども産むつもりの人は、毎年受けなきゃだめだよ。これ、5cmはあるもの」
「ぅえ」

そのあと妊娠も確定したのだが、筋腫発見の事実のほうが鮮烈で、頭は真っ白。「両方一緒にわかるケースはレアじゃないよ。ただ妊娠中は筋腫を摘出できないから、様子見だね」と医師に言われ、正気に戻る。
家族にふたつの報告をすると、喜ぶ一方で、やはり筋腫のことが気にかかるようだった。摘出するかどうかは産後に考えよう、と気持ちを切り替え、妊婦らしく過ごすよう努める。禁酒・禁カフェインも、意外とやればできるものだ。


6月下旬、「もう一回診たいから、数日後に改めて来て」と言われて受けた内診で、「心拍が確認できない」と言われた。何も不調はなかったが、すでに腹の中で死んでいるという。稽留流産というのだそうだ。「なにか要因があったというわけではなく、遺伝子的に生きられない子だった可能性が高いということだからね」。
何かの間違いであってほしかったけれど、「このままにしておけないので、可能なら今日の段階で手術の予定を立てましょう」と促されると、事実を受け入れるしかない。手術の説明中や会計待ちの際はこらえていたが、医院の外に出ると涙が止まらなかった。

7月上旬、掻爬手術を受けた。麻酔が切れたときに動けないよう、足を縛られる。手術自体は30分もかからなかったと思うが、最後のほうで麻酔が切れ始め、えらく痛かった。2時間ほど休憩して母に迎えに来てもらい、そのまま3日間、実家で静養。仕事を家に持ち帰っていたのが、図らずもいい気休めになった。妊婦用アプリからもデータを削除して、短い短い、マタニティライフのおわり。


8月上旬、紹介状を手に県立病院へ向かった。筋腫の摘出について、具体的に検討するためである。超音波と内診を終えた医師は「いつももっとデカイの見てるから、このくらいだと小さく感じちゃうね」と少し笑った。
同月下旬には、MRIで身体を縦に割り、筋腫の位置を確認。「こりゃもう本人次第だよ」と医師。選択肢は、①筋腫を摘出して半年間で回復を目指す、②とらずに経過観察をする、の2択。ただしいずれを選択しても、筋腫のある位置から判断して、出産時は帝王切開になる可能性が高いという。

筋腫があることによる生活面への支障は現時点ではないため、痛くもかゆくもないところにメスを入れることには抵抗があった。しかし妊娠すれば、筋腫は胎児とともに成長する。早産の危険を抱え、働きながら妊婦生活を送るのもこわい。周囲の人からも意見を聞き、悩みに悩んで12月に手術を受けることに決めた。入院予定は約1週間。日程表に書かれていた「術前の浣腸」が最大の不安事である。


…ということで、出術の話はまた改めて。
事情を知っている人に「ダメになっちゃって」と話すとものすごく体調を心配されるのだが、子どもを見ると今まで以上に母性本能がうずいたり、ムダに涙もろくなったり、急にネコアレルギーを発症したりする自分に「産んでもねぇのに体質変化かよ!」とツッコみながら普通に生活しているので(お酒も飲んでるよ)大丈夫っす、ほんと。


あーやだな、浣腸。